農地法って?
いつもお世話になっております。
愛知県常滑市の行政書士加藤です。
2015年12月より、農地法第3条第1項許可申請に係る事務につきましては、常滑市では「農業委員会」ではなく「常滑市」が行うこととなりました。(国家戦略特区の特例措置)
なお、農地法第3条の3届出に係る事務につきましては、従前どおり「農業委員会」となりますのでご注意下さい。
そもそも農地法って?
農地法とは、簡単に言ってしまえば「食料の安定供給の確保」のため、農地に係る耕作者の地位の安定及び国内農業生産の増大を目的とした法律です。
目的については農地法第1条で触れています。
農地法第1条 この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もつて国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。
農地法で言う「農地」とは?
農地法では上述の目的により、農地に係る様々な規制が定められています。
では、農地法の定める農地とは何を指すのでしょうか?
農地法第2条第1項により、「農地法上の農地」とは「耕作の目的に供される土地」と定義されています。
判例によると、この「耕作」とは「土地に労資を加え肥培管理を行って作物を栽培すること」を指すものとされ、また「作物」とは「穀物、蔬菜類にとどまらず、花卉、桑、茶、たばこ、梨、桃、りんご等の植物を広く含み、それが林業の対象となるようなものでない限り永年性の植物でも妨げないと解すべき」とされています。
つまり、肥培管理を行っている限り果樹園、草木の苗を育てる苗圃(びょうほ)、わさび田、はす池等も「農地法上の農地」に該当します。
◎客観主義
客観的(地目、利用状況並びに農地及び耕作者の経緯等)に見てその現状が耕作の目的に供されるものと認められる土地であれば「農地法上の農地」とされます。
土地所有者の主観によって定まる性質のものではありません。
上述の「耕作の目的に供される土地」とは、現に耕作の目的に供されている土地だけではなく、今後耕作しようと思えばいつでも耕作可能な土地をも含みます。
例として休耕地、不耕作地等も「耕作の目的に供される土地」と言えます。
◎現況主義
農地法上の農地に該当するか否かは、その土地の現在の状況によって判断します。
例え、登記簿上の地目が宅地とされていたとしても、現に農地として利用されていれば「農地法上の農地」に該当します。
◎農地ではないが、「採草放牧地」も農地法の適用を受ける土地!
採草放牧地とは、農地以外の土地で主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供される土地を指します。
ここで言う「事業」とは、これらの行為(耕作又は養畜)に関して反復継続して行われることを指し、必ずしも営利を目的とすることは要しないとされています。
また、屋根葺用又は燃料用等のための採草を主目的とするカヤ刈場は含まれないものとされています。
河川敷、堤防、公園及び道路等は耕作又は養畜のための採草放牧の事実があったとしても、それが主たる目的と認めることができないため採草放牧地とはなりません。
採草放牧地の目的に供されている土地が、併せて材木育成の目的にも供されている場合であって、いずれが主たる目的であるかの判定が困難な場合がありますが、その場合には樹冠の疎密度が0.3以下の土地に関しては、その主たる目的は採草放牧地として解されるものとされています。
農地法第2条第1項 この法律で「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいい、「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。
農地法が適用されるとどうなるの?
農地法の適用を受ける土地を売買したり、また、農地以外のものとする場合等に許可、届出等が必要となります。
以下、主だった許可又は届出に係る規制関係を示します。
対象 | 状況 | 市街化調整区域 | 市街化区域 | ||
農地 | 権利を移動する場合 | 農地のまま権利を移動(使用収益権の設定を含む)する場合 |
農地法 第3条許可 |
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相続、遺産分割等により農地のまま権利が移動した場合 |
農地法 第3条届出 |
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転用を目的とし権利を移動(使用収益権の設定を含む)する場合 |
農地法 第5条許可 |
農地法 第5条届出 |
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転用のみをする場合(権利の移動を伴わない自己転用の場合) |
農地法 第4条許可 |
農地法 第4条届出 |
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採草放牧地 | 権利を移動する場合 | 採草放牧地のまま権利を移動(使用収益権の設定を含む)する場合 |
農地法 第3条許可 |
||
相続、遺産分割等により採草放牧地のまま権利が移動した場合 |
農地法 第3条届出 |
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転用を目的とし権利を移動(使用収益権の設定を含む)する場合 | 農地に転用する場合 |
農地法 第3条許可 |
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農地以外のものに転用する場合 |
農地法 第5条許可 |
農地法 第5条届出 |
|||
転用のみをする場合(権利の移動を伴わない自己転用の場合) | 規制なし |
農地法第3条第1項本文 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。
農地法第3条の3 農地又は採草放牧地について第3条第1項本文に掲げる権利を取得した者は、同項の許可を受けてこれらの権利を取得した場合、同項各号(第12号及び第16号を除く。)のいずれかに該当する場合その他農林水産省令で定める場合を除き、遅滞なく、農林水産省令で定めるところにより、その農地又は採草放牧地の存する市町村の農業委員会にその旨を届け出なければならない。
農地法第4条第1項 農地を農地以外のものにする者は、政令で定めるところにより、都道府県知事の許可(その者が同一の事業の目的に供するため4ヘクタールを超える農地を農地以外のものにする場合(農村地域工業等導入促進法(昭和46年法律第112号)その他の地域の開発又は整備に関する法律で政令で定めるもの(以下「地域整備法」という。)の定めるところに従つて農地を農地以外のものにする場合で政令で定める要件に該当するものを除く。第5項において同じ。)には、農林水産大臣の許可)を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
第7号 市街化区域(都市計画法(昭和43年法律第100号)第7条第1項の市街化区域と定められた区域で、同法第23条第1項の規定による協議が調つたものをいう。)内にある農地を、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地以外のものにする場合
農地法第5条第1項 農地を農地以外のものにするため又は採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く。次項及び第4項において同じ。)にするため、これらの土地について第3条第1項本文に掲げる権利を設定し、又は移転する場合には、政令で定めるところにより当事者が都道府県知事の許可(これらの権利を取得する者が同一の事業の目的に供するため4ヘクタールを超える農地又はその農地と併せて採草放牧地について権利を取得する場合(地域整備法の定めるところに従つてこれらの権利を取得する場合で政令で定める要件に該当するものを除く。第4項において同じ。)には、農林水産大臣の許可)を受けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
第6号 前条第1項第7号に規定する市街化区域内にある農地又は採草放牧地につき、政令で定めるところによりあらかじめ農業委員会に届け出て、農地及び採草放牧地以外のものにするためこれらの権利を取得する場合
上の関連条文中の「当事者」とは、例えば農地の売買による所有権移転の場合、農地法第3条許可申請は「売主」及び「買主」の当事者「双方」による申請を原則とすることを意味します。
では、失礼します。