建設業許可と事業主の相続

いつもお世話になっております。

愛知県常滑市の行政書士加藤です。

家

最近は建設業に関するニュースが多いですね。

明るい話題ならいいのですが、長引くニュースには逆のことも多いものです。

なお、建設業を営むには原則として建設業許可を受けなければなりません。

(軽微な建設工事のみを扱う場合は不要です)

今回はそんな建設業許可と相続の関係について少し触れてみたいと思います。

 

相続とは?

皆様ご存知の「相続」ですが、実際に何の法律にどのような条文で記載されているのかまでは、ご存知ではないという方も多いのではないでしょうか。

相続の一般的効力は民法第896条により次のように定められています。

民法第896条本文 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。

原則として亡くなられた方の財産法上の権利義務を相続人は全て承継することができる旨定められています。

ここまでは、一般的なイメージどおりの規定ではないでしょうか。

しかし、この条文には以下のような但書があります。

民法第896条但書 ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

このように承継することができないものがある旨定められています。

では、その承継することができない「一身に専属したもの」とは何か?

簡単に言えば、その性質を考える上で被相続人のみに帰属すべきものを意味し、これを(帰属上の)一身専属権と呼びます。

 

一身専属権の具体例

民法の規定により被相続人の死亡により消滅又は終了すると定められている一身専属権には次のようなものがあります。

  • 代理の当事者の地位(民法111条)
  • 定期贈与の当事者の地位(民法552条)
  • 使用貸借の借主の地位(民法599条)
  • 雇用契約の当事者の地位(民法625条)
  • 委任契約の当事者の地位(民法653条)

また、民法上定められていない一身専属権には次のようなものがあります。

  • 身元保証人の地位
  • 生活保護受給権
  • 扶養請求権
  • 公営住宅の使用権
  • 士業等の資格

条文だけを見ますと「承継できないものがあったのか?」と思われるかもしれませんが、具体例を見れば多くはご納得いただけるものかと思います。

 

では、建設業許可は承継できるのか?

ここでは事業承継全体についての検討ではなく「建設業許可」に限定した検討をしたいと思います。

仮に、許可を取得して建設業を営むAさんが、自分の亡き後は事業を息子のBさんに継がせたいと考えているとします。

 

法人の場合

Aさんが株式会社の代表取締役として建設業を営んでいる場合には、建設業許可は法人に付与されていますので、Aさんがお亡くなりになったとしても建設業許可の承継の問題は生じません。

この場合では建設業許可を維持していく為の対策が必要となります。

 

個人の場合

Aさんが個人事業主として建設業を営んでいる場合には、建設業許可はAさん個人に付与されています。

あとは相続できる権利なのか、それともできない権利(一身専属権)なのかの問題ということです。

上の一身専属権の具体例から解答も見えてくるかもしれませんが…

建設業許可は一身専属的なものとして、相続による承継は認められていません

この場合は息子であるBさんが建設業許可を新たに取得できる為の対策が必要となります。

 

共通の対策

いずれにしろ許可業者として事業を継続するためには建設業許可の要件は満たしている必要がありますので、要件を整えるための事前の準備は非常に重要なものとなります。

長い場合ですと10年程の期間を要することもあります。

まだまだ先のこととお考えの場合でも、早めの対策をお勧めします。

 

では、失礼します。

 

なお、弊所では建設業許可専門サイトをご用意しております。

許可要件につきましては専門サイト「建設業許可愛知県申請オフィス」の「建設業許可を受ける要件は?」をご覧ください。

Follow me!